こんにちは!
院長の木村です。
前回は犬で多い僧帽弁閉鎖不全症について紹介しましたが、今回は猫で多い心筋症について紹介したいと思います。
【病態・原因】
そもそも心筋症とはなんでしょうか?
遺伝的な要因や栄養素欠乏によって心臓機能に異常をきたす心筋疾患と定義されています。
心筋症の原因としてタウリン欠乏症が有名なのですが、近年のフードはバランスが良いためほとんど遭遇する機会がなくなりました。
そのため、心筋症は基本的には先天性疾患(生まれつき持っている病気)ということになります。
心筋症は様々な種類があります。以下に主要な心筋症の種類を紹介します。
・肥大型心筋症
・拡張型心筋症
・拘束型心筋症
・不整脈源性右室心筋症
この中でも猫さんで多いのは肥大型心筋症です。今回はこちらについてご紹介したいと思います。
まず心臓の働きについては以下の記事を見ていただけるとよいかと思います。
肥大型心筋症は主に心室(左心室)の筋肉が分厚くなっていく病気となります。
以下にイラストを載せます。
正常心臓と比較して、肥大型心筋症では心室が厚くなっていることがわかりますね(赤矢印)
これは筋トレして筋肉が育っていくことに近いのですが、問題点としては心室の中に貯めることのできる血液量が少なくなってしまうということにあります。(青矢印)
そうなってしまうと、左心室の上に位置する左心房に多くの血液が残ってしまうことになります。
その結果、血液の渋滞が起こり、肺水腫(僧帽弁閉鎖不全症でご説明してます)を起こし呼吸困難になることもあります。
また、猫では血栓症ができてしまうケースもあります。
もし血栓が大動脈を流れてどこかに詰まってしまうと様々な症状を引き起こします。。。
脳梗塞、心筋梗塞、腎梗塞など血栓がつまる臓器によってかなり状況が変化します。
中でも多いのは後足の血管に詰まることによって突然両後ろ足の麻痺、激痛が起こることです。(後躯麻痺)
これは致死率が高くとても危険な合併症となります。
【診断・検査】
診断は聴診や画像検査で行います。
聴診では心雑音の有無を確認します。ただ心筋症は心雑音が聞こえないことが多いので注意が必要です。
そのため、健康診断などで心臓バイオマーカーという血液検査(NT-proBNPなど)を測定することで発見される場合もあります!(健康診断大事ですね)
レントゲン検査では心臓の大きさや肺の黒さを確認します。
エコー検査では実際に心臓の内部構造を確認できるため、心筋が厚くないか、心房が大きくないか、血栓ができていないかを調べることができます。
さらに心電図検査では、不整脈がないか確認します。
【重症度分類】
猫の心筋症も僧帽弁閉鎖不全症と同様にアメリカの獣医内科学会が作成したACVIM分類というものがあります。当院でもこちらの分類を使用しております。
上の表がACVIM分類の詳しい説明です。
ステージA・・・心臓病リスクの多い猫種はこちらに分類されます。具体的にメインクーン、ラグドール、ブリティッシュショートヘア、ノルウェジャンフォレストキャットといった純血種猫が多いとされています。
ステージB・・・検査で心筋症が認められる場合はステージB以降になります。この段階では多くの動物さんは無症状です。
さらにBにはB1(検査上心臓は大きくない)とB2(検査で心臓が大きい、血栓ができそう)の2つに分かれます。
ステージC・・・ここから心不全と言えます。症状としては肺水腫という呼吸困難や、血栓症があります。犬と比べて猫は突然発症することがあるため、ステージCになるまで飼主さんが心筋症に気が付けないことが良くあります!
ステージD・・・末期的な状態です。強い心不全治療を行なっても安定しない動物さんのことを指します。
【治療】
治療は投薬などの内科治療がメインとなります。
僧帽弁閉鎖不全症と違って心筋症は手術で完治は望めません。(人では心臓移植が行われています)
血栓症に関しては、状況によって外科手術(血栓除去)、血栓溶解療法(薬剤で血栓を溶かす)が行われることもあります。
しかし、これらもリスクがあるため慎重に判断しなければなりません。
猫の心筋症は発見が難しいことが少なくないため、定期的な健康診断の実施(年1-2回)が大切です。
もし、過去に心雑音や心筋症を指摘されたことがある、愛猫さんの心筋症が心配といった場合はお気軽にご相談下さい。
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