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動物の健康を守るために—抗生剤の正しい使い方を考える

こんにちは、木更津みき動物病院の三瓶です。

はじめに、皆さんは「抗生剤(抗生物質)」について、どのようなイメージをお持ちでしょうか?風邪をひいたら飲むもの?感染症を治すために必要な薬?確かに抗生剤は細菌感染症の治療においてとても重要な役割を果たします。しかし、世界的に 「耐性菌」の問題が深刻化している ことをご存じでしょうか?


抗生剤が効かない「耐性菌」の増加

抗生剤が効かなくなる「耐性菌」は、近年急速に増えています。これは人間の医療現場だけでなく、動物医療の分野でも大きな問題となっています。

抗生剤を適切に使用しないと、耐性菌が生まれ、将来的に「どの抗生剤も効かない細菌感染症」が発生するリスクが高まります。実際、WHO(世界保健機関)も 「抗菌薬耐性は世界的な健康危機」 として警鐘を鳴らしています。

「具体的には2050年までに1000万人の死亡が想定され、現在のがんによる死亡者数を超える」

と試算されています。

あと25年後には「がんで余命宣告」されるのではなく、「感染症で死亡する可能性がありますが、治せないので諦めてください」と言われる可能性が高くなるということです。

動物病院での抗生剤の使い方も、この問題に大きく関係しています。例えば、「感染症ではないのに予防的に抗生剤を使う」「本来必要な期間よりも長く、あるいは短く投与する」 などのケースがあると、耐性菌のリスクが高まります。

 

動物病院での抗生剤使用の現状

当院では、本当に必要な場合にのみ抗生剤を使用する ことを心がけています。しかし全国的に見ると、まだまだ抗生剤の適正使用が徹底されていないのが現状です。

もちろん、動物病院が悪意を持って抗生剤を過剰使用しているわけではありません。しかし、従来の「とりあえず抗生剤を処方する」という慣習が残っていると、結果的に耐性菌のリスクを高めることにつながってしまいます。

 

 

獣医療で生まれた耐性菌が、人間にも影響する

「動物の耐性菌の話でしょ?人間には関係ないのでは?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、動物医療で生まれた耐性菌が人間にも影響を及ぼすことがわかっています。

例えば、以下のような経路で、動物の耐性菌が人間に広がる可能性があります。

動物から人間への直接感染(Zoonotic transmission)

 → 例えば、耐性菌を持つペットが人間に噛みついたり、舐めたりすることで、菌が人間に感染することがあります。

食肉を通じた感染(Foodborne transmission)

 → 畜産動物に不適切に抗生剤を使用すると、耐性菌が増殖し、その肉を介して人間に感染する可能性があります。

環境中での拡散(Environmental transmission)

 → 動物病院や農場などで耐性菌が環境中に広がり、空気や水を介して人間に影響を与える可能性があります。

このように、獣医療での抗生剤の乱用は、最終的に人間の医療にも悪影響を及ぼすのです。

これは「ワンヘルス(One Health)」と呼ばれる考え方にもつながります。「人間、動物、環境の健康はすべてつながっている」という視点を持ち、耐性菌問題に向き合うことが重要です。

 

飼い主様皆さんに知ってほしいこと

動物病院で抗生剤を処方された際、ぜひ以下の点を意識してみてください。

抗生剤が本当に必要かを確認する

 → 例えば「ウイルス感染症」に抗生剤は効果がありません。必要かどうかを獣医師に確認しましょう。

処方された抗生剤は指示通りに使う

 → 途中でやめたり、自己判断で量を減らすと、耐性菌が生まれる原因になります。

他の動物や人間の抗生剤を勝手に使わない

 → 動物用と人間用の抗生剤は異なります。過去に処方された薬を勝手に使うこともNGです。

「とりあえず抗生剤をください」と言わない

 → 獣医師が判断する前に抗生剤を求めるのではなく、適切な診断のもとで処方されることが大切です。

 

これからの獣医療に求められること

抗生剤の適正使用は、動物たちの健康だけでなく、人間社会全体にも影響を与える重要な問題です。獣医療の分野から耐性菌の問題を悪化させることがないよう、私たち獣医師も責任を持って抗生剤を使用する必要があります。

私たち木更津みき動物病院では、できる限り耐性菌を生まないよう、以下のように慎重に抗生剤を使用する方針を取っています。

  • 細菌による感染症であるかを検討すること
  • 細菌培養検査を実施し適切な抗生剤を選択すること

これは当たり前のことですが、実施されていないことが多いのが獣医療の現状です。

当院でも培養検査に提出すると耐性菌が検出される頻度が多く、頭を悩ませています。

飼い主の皆さんも、動物の健康を守るために、「抗生剤の適正使用」について一緒に考えていきませんか?

ご不明な点があれば、ぜひご相談ください。皆さんと一緒に、より良い獣医療を目指していきたいと思います。

 

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